イカット(絣布)のつくり方
世界中の様々な地域では、今も尚、伝統を受け継いだ織り風景が展開されておりますが、こちらの「イカット(絣布)のつくり方」のコーナーでは、その一例としてインドネシアのフローレス島シッカ村での染織作業をご紹介致します。
染織の盛んなヌサトゥンガラの中でも比較的アクセスがしやすい地域ということもあり、観光客も多く訪れる村です。
興味を持って頂けましたら、是非訪問なさってみて下さい。
尚、インドネシア・スンバ島での染織風景は姉妹サイト「asian-textile」にてご紹介致しておりますので、宜しかったら参照下さい。
◆スンバ島イカット(ヒンギー)のつくり方
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紡ぎ
絣布(イカット)づくりは、綿くり、綿打ちといった作業を経て、糸に紡ぐことから始まります。
一つ一つの綿花を紡いで一本の糸にするという、根気のいる作業がイカットづくりの第一歩となります。
手紡ぎ糸による織りは、布地に独特の温かみが表れ、紡績糸による織りよりも若干厚みが生じます。
反面、強度という点では紡績糸のほうに軍配が上がります。
現在では、アジア全般で言えることですが、昔ながらの手紡ぎ糸を使用した織りは少なくなり、紡績糸を使用して染織をする地域が多くなっております。
括り
紡いだ糸は輪状に木枠に整経された後、下書きを施したりイマジネーションによるフリーハンドなどで、モチーフが括られていきます。
この「結ぶ」動作のことをインドネシア語でikatと言い、そのikatが絣布の共通語として世界に広まったと言われております。
括り作業には昔からヤシの若葉などが使われておりましたが、今では私達にもお馴染みの梱包用ビニールテープを使用する村も増えております。
この写真にも、ピンクのビニールテープを使用している様子が見られます。
染め①
括り終えた糸は、木枠から外され染色されます。
こちらは茜科の植物の根を使っての染め作業。
インドネシアではmengkudu(ムンクドゥ)と呼ばれ、民間薬のジャムゥに使用されることもあります。
日本でもノニという健康飲料が流行りましたが、そのノニと同種です。
染色は一回だけではなく、気に入った色彩になるまで何度も何度も繰り返し行われます。
指先も染まり、衣服にも染料が飛び散りますが、女性達は楽しげにゆったりと作業しておりました。
染め②
こちらは3回目の茜染めの途中。
まだまだ染めは続き、染め重ねることによって、より濃く鮮やかな赤の彩りが生み出されていきます。
それぞれの人のこだわりにより、染め上げるまでの回数や期間には数ヶ月~数年と個人差があるそうです。
茜の他に、このエリアでの主な染料としては、
・藍色に染めるためのインディゴ(インド木藍)
・黄色を染めるためのターメリック(うこん)
などがあります。
整経
長い時間をかけて各色での染色が行われた糸は、やっと括り部分が解かれます。
そして、また木枠に巻かれて模様がずれないで綺麗に織れる様に整えられます。
この作業を整経と言います(この地域の絣布は経糸のみを括って文様を表す経絣が主流となります)。
整経は、織りや染め程は注目を受けない作業ではありますが、括りと同様に、出来上がった絣布(イカット)の絣足の良し悪しを左右する重要かつ根気のいる作業です。
織り
こうしてようやく織り作業が始まります。
最終的に整経された糸を、模様がずれないように織機に掛けます。
この地域では、昔ながらの腰機(地機/いざり機)を使った経絣が主流ですが、全身を使った作業となりますので、思いのほか重労働です。
腰機(地機/いざり機)での手織りの場合は、二人織りなどが時折行われる高機のようには幅広の織物はつくれませんので、70cm幅前後が限度となります。
そのため、幅広の大きな布が必要な場合は、同柄の織物を複数枚つくり、接ぎ合わせることによって大きく仕立てます。
アジアの国々を廻って嬉しく感じることは、美術品・伝統工芸としてのみではなく、日々の生活を営んでいく上で密接に関わりあっている織物が、今も存在しているということです。
お母さんやお婆ちゃんが家族の為に、女の子が好きな彼の為に・・・
と、様々な思いを込めて今も機を織り続けている地域が残っております。
心温まる素敵なことですね。
皆さんも旅行の際にお時間の余裕がありましたら、ちょっと足を伸ばしてその先の小さな村々を訪れてみてはいかがでしょうか。
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